「瑕疵の壁」看板について
『看板に書かれた文章の意味が不明』
そんな声が、この看板を設置した古関東深海盆ジオパーク推進協議会(「本協議会」)の内外から寄せられておりますので、このページでは詳細を説明しております。
【概説】
この看板は『この露頭(崖)に打たれた3色の杭は古地磁気の向きを示すものであるが、上半分はこの露頭ではない別の場所のデータが用いられた』という問題を示しております。
この露頭では、1997年に発表された会田(1997)論文により
初めて松山-ブリュンヌ古地磁気逆転現象が確認されました。
1990年から91年にかけて、論文を発表された会田信行氏と本協議会の会長であった楡井久(茨城大学名誉教授)を含む千葉県環境研究センター地質環境研究室のメンバーにより、この露頭で古地磁気試料の採取が行われました。
このときの試料採取の痕跡は、この看板から養老川の上流に向かって30歩ほど歩いた場所に見る事が出来ます。
足元が大変滑りやすいので、歩きスマホ等をせず転倒しない様に注意しつつ、写真の様なお札を探してみましょう。
緑-黄-赤の3色を見ることが出来ますが、これらは
緑色:正磁極
黄色:中間の磁極
赤色:逆磁極
を、それぞれ示しています。
1997年の論文により古地磁気逆転現象が確認され、露頭で採取跡が確認できたところで、今度はこの『意味が不明』な看板の側にあります下の写真の様な杭表示に注目してみましょう。
この杭は2015年7月~8月にかけて名古屋で開催された国際第四紀学連合(「INQUA」と言います)における現地巡検のために、GSSP申請グループのデータ提供と変更指示に基づき本協議会のメンバーが打ったものです。
この巡検は、当時GSSP候補であったイタリア2候補地の巡検が前年の2014年に行われたことを受けて、日本においても企画されたものですが、この杭打ちの経緯に『科学の落とし穴』がございます。
本協議会の会長であった楡井も参加したGSSP申請グループの事前の会議により、巡検当日は海外の地質学者にも古地磁気の変化を判りやすく説明するために、杭表示を用いる事が合意されました。
この合意により、2015年6月22日には現地整備担当の楡井のもとに、GSSP申請グループから古地磁気データがメールで提供されました。
メール文章には『田淵ではByk-Eより50cm上位までしか測っていませんが、ダミーの孔を開けてあるのでyanagawaのデータを使って極性の色をつけてください』とありました。(※田淵:この露頭のこと ※yanagawa:この露頭から南西に1.7kmほど離れた柳川沿いの枝沢)
『ダミーの孔』とは言うものの採取孔は空けられていましたので、当日までには現地で採取した古地磁気データが上がるだろうと考え、本協議会は26日にダミーのテープを露頭に貼り付けました。
そして7月23日に暫定としてダミーのテープの色通りに杭を打ち込み、写真を撮りGSSP申請グループにご確認頂いたところ、色の変更指示を頂きました。この変更指示通りの色表示が現在の露頭に打ち込まれている杭の色です。
色の変更指示があったため、現地のデータが上がったものと考えて杭表示の色変更を行いましたが、巡検後の会議の場において上半分は現地で採取したデータではなく、最初にデータ提供があった時から変わらず柳川のデータが用いられていた事実が判明しました。
GSSP申請グループはこの件につきまして、『2015年の論文には柳川地区の古地磁気データであることが書かれている。また巡検はGSSP審査とは関係なく、2017年論文(Okada et al.(2017))でこの露頭における古地磁気の逆転が再現出来たから問題ない(「チバニアンの解説」ホームページより)』とされておりますが、GSSP申請グループが作成し、2015年の巡検で海外の研究者に配布された案内書には柳川地区の古地磁気データが用いられていることが明記されておりません。
本協議会はこれを問題視しており、これが『科学の過信・瑕疵の壁』の看板が意味する内容になります。
GSSP申請グループによれば『2017年の論文(Okada et al.(2017))で露頭の古地磁気逆転現象が再現された』と言う事なので、自宅のPCを用いて実際に古地磁気グラフを作図して論文の図と見比べてみましょう。
(※表計算ソフト(Excel)を備えたPCが必要になります。作図の方法はこちら)